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「欲望」と資本主義 終わりなき拡張の論理 感想

お疲れ様です。yasusususuです。

 

私は、そもそも資本主義というものがどういうものなのかよくわかっておりません。

巷で資本主義が取り沙汰されていますので、この機会に資本主義について考えてみようと思い、本書「「欲望」と資本主義 」(佐伯啓思 著)をipadの本棚に並べました。

 

概要

著者の分析の手法

日本を含むいわゆる先進国は、資本主義体制を採っていると思います。資本主義体制が経済成長を高めるのに効率的であると考えられているからです。

しかし、著者は、経済成長を高めることが「良い」ことであるという暗黙の前提を疑います。著者は、この前提が疑われなかった理由が2つあるといいます。1つは、経済学という一つの専門的学問では、この前提を問題視することができないという専門主義の弊害です。もう1つは、経済学を効率的資源配分の方法を科学するものと捉える見方が経済学というものに対する沢山ある見方のうちのひとつの見方に過ぎないのに、これが強調されていることです。

著者は、資本主義の概念を捉え直し、資本主義の文明論的、歴史的意味を追うことで、現代の経済社会を定位していきます。

 

資本主義とは

資本主義とは、Wikipediaによると*1

カール・マルクスは著書『資本論』の中で「生産手段が少数の資本家に集中し、一方で自分の労働力を売るしか生活手段がない多数の労働者が存在する生産様式」として「資本主義」と定義した。

とのことです。 

現代は、資本家が労働者を支配するという状況にありません。膨大な数のいわゆるビジネスパーソンが経済の主役です。そして、このビジネスパーソンは、生活の場においては消費者です。

著者の整理*2によると、マルクスも、欲望や「効用」を分析のかなめにすえた近代経済学も消費者の「欲望」になんの重要性も与えていないとのことです。消費者の「欲望」を与件としているというのです。

そこで、著者は、マルクスも近代経済学も分析していない「欲望」がどのように形成されるのかという点に主眼を置き資本主義を捉え直していきます。

著者は、資本主義を

「欲望」にかたちをあたえ、そのフロンティアの拡張を方向づけ、その流れを整序するひとつの装置なのである。

とします*3

「欲望」は、与件のものではなく、「欲望」を開拓し、作られた「欲望」を物として流通させる装置のうちのひとつが資本主義であるというのです。

 

著者は、資本主義をこのように捉え、歴史の中で、著者の捉えた資本主義を見ていきます。

まず、ヨーロッパでアジアの物が重宝されるなど、文明の交錯により生じた「欲望」のフロンティア開拓のために社会の外に向かう資本主義が、帝国主義のおこりにより限界をむかえます。その後、欲望のフロンティア開拓が社会の内に向かうようになり、消費者たる大衆は、他社との比較から欲望の中に見出しますが、物の象徴作用が衰弱していき、欲望のフロンティアがゆきづまっていったと著者は、分析しています。

 

雑感

若者の◯◯離れという言葉があります。

私は、本書の分析により、この◯◯離れの原因に一つの説明を与えることができるのではないかと思います。

例えば、若者の車離れについて考えてみます。
かつて、車は、ステータスシンボルとしての一定のイメージを持ち、大衆に対する訴求力を持っていたものと思います。しかし、日本では、消費者の多様化に応え製品を多様化してきたことにより、フロンティア開拓が限界を迎えたと分析されており*4、これは車についても当てはまると思います。現代では、車が人の欲望のフロンティアとなるかどうかは、消費者ひとりひとりの価値観にかかっているところ、車がまだ強い訴求力を持った時代を知らない若者にとって、車が必ずしもステータスシンボルとしてのイメージを象徴する物ではなくなったといえるのではないでしょうか。そこで、多くの若者にとって車は欲望の対象とはならず、若者の車離れということが言われるようになったということが可能ではないかと思います*5

 

ところで、非正規雇用労働者の割合が増えてきています。昭和59年には15.3%(労働者3936万人中604万人)であった非正規雇用者の割合が、平成26年には、37.4%(労働者5240万人中1962万人)まで増加し、毎年増加傾向にあります*6。企業のプロジェクトごとに採用し、解雇しやすい労働者の確保の要求と、必ずしも正規雇用に限らない多様な働き方を求める労働者の増加などの要因があるのかと思いますが、マルクスの定義した資本家と労働者の2つの階級への分化が起ころうとしているのではないかと危惧します*7

 

 

「欲望」と資本主義 終りなき拡張の論理 (講談社現代新書)

*1:資本主義 - Wikipedia

*2:本書66頁参照

*3:本書96頁

*4:本書170頁

*5:所得の減少、都市圏における利便性の向上など様々な原因が複雑に絡み合っていると思いますが。

*6:「非正規雇用」の現状と課題 |厚生労働省

*7:資本家階級、労働者階級に分化することが「悪い」ことなのかはまだ考えていません。