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PSYCHO-PASS GENESIS 1 感想

お疲れ様です。yasusususuです。

PSYCHO-PASS サイコパス 関連書籍まとめ - 私にみえている世界

この記事でご紹介した、PSYCHO-PASS サイコパスノベライズ本の新刊、PSYCHO-PASS GENESIS 1を早速購入しました。

※以下ネタバレを含みます。ご注意ください。

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本書は、新人として警察庁に赴任した若き日の征陸智己を描いたスピンオフ作品です。

内容は、2部構成です。

第1部では、シビュラシステムが導入されて間もない、シビュラシステムは、包括的生涯福祉支援システムとして運用され、まだシビュラシステムと「犯罪係数」と結びついていない時代が描かれています。

この時代では、警察権は警察庁に、シビュラシステムは厚生省にそれぞれ帰属していています。司法権は、明記こそないものの現在の現実世界と同様、裁判所に帰属しているものと思われます*1。アニメ第2期で言及がありましたが、この時代は、厚生省、警察庁、国交省の3省庁間で権力抗争が繰り広げられていた時代で、厚生省がほぼ覇権を握りつつある段階です。

厚生省は、ドミネーターにより「犯罪係数」を計測し、即時量刑・即時執行をするというアニメの時代でおなじみのシステムを運用に移すための実験をしている段階にあり、その実験のデータ集めのために「刑法39条*2」と「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察に関する法律」を運用して、精神異常者(=サイコパス)が関わった事件に関する捜査権限を警察庁から奪います。こうして重大犯罪にもかかわらず未解決事件となった事件を「ケース39」と呼び、征陸ら警視庁の特命捜査対策室のメンバーがケース39を解決していくという話が描かれています。

征陸は、ノナタワー落成式襲撃事件により父親を失っており、その事件がケース39であることから、ケース39の捜査の中で、この事件の主犯であり、父親の仇である同事件の主犯と対峙することになります。その主犯は、シビュラシステムの不完全性をほのめかすのですが…

 

第2部は、第1部の最後から7年後、警察庁が厚生省に吸収され、厚生省公安局刑事課となる場面からはじまります。この時代に司法制度が改正され、「犯罪係数」による即時量刑・即時執行のシステムが導入されることになります。「潜在犯」が更生施設に強制隔離されるというシステムも、この法改正により市民に認知されることになります。なお、この時点では、ドミネーターではなく、slaughterという機器により即時量刑・即時執行が行われています。物騒な名前ですよね。

市民は、「潜在犯」になることをおそれ、更生施設でのセラピーへの需要が高まっていきます。そこで、厚生省は、権力争いに敗れた形の国交省の力を用い、廃棄区画を都市整備計画により再編し、不足した更生施設を増設していくのですが、「潜在犯」が病気のように伝染するという説を唱える市民団体によるデモが更生施設建設地で起こります。そして、デモの最中、デモ隊を刺激するような発言を行う女性が現れ、デモ隊が暴徒化します。暴徒化したデモは、鎮圧されるのですが、そのとき、シビュラが適正ありと判断した潜在犯に、執行官というslauhterによる執行を行わせる役割を与え、その執行官を指揮監督し、犯罪の鎮圧を図る監視官を置く体制の整備を厚生省が秘密裏に進めていたことを征陸らは、知ることになります。

その後、刑事としての自分の役割に悩む征陸は、デモの際に現れた女性の出入りしている施設で行われている反社会的な活動の捜査のために、その施設に出向くのですが、そこで、かつて、特命捜査対策室の上司であり、征陸が親爺と呼び慕っている人物、八尋和爾と対峙することになり…

 

本書では、話が完結しません。

第1部の冒頭で、征陸が八尋和爾を殺しに行くと書かれていることから、今後話はそのように展開していくものと思われます。

八尋は、シビュラシステムの不完全性を指摘して、社会にこのシステムが浸透するのを食い止め、システムを破壊しようとするものと思われます。不完全な人間が作り不完全な人間が運用するシステムが完全であるはずがないということは、過去に多くのSF作品が教えてくれていることですし、論理的にもそう帰結します。八尋が、不完全性(イレギュラーやバグ)を取り込むことで完全性を維持するシステムであるシビュラシステムのどこに不完全性を見出し、指摘してくるのか。続刊が非常に楽しみです。

 

 

私が、PSYCHO-PASS サイコパスシリーズが好きな理由の一つに、登場人物のセリフが好きというものがあります。最後に私が本書で好きだった箇所を引用して終わりにしたいと思います。

 

新任の征陸に対して八尋

「…刑事は犯罪者に接近する。そこで、奴らが生み出す狂気の渦に飲み込まれないためには、その本質について理解しなければならない。その意味で、この本は最適な教科書と言えるだろう。アルベール・カミュの『カリギュラ』ー暇なときにでも読んでおけ」

公安局刑事課に再編された後同課への赴任を控えた征陸に対して八尋

「ーこの世界に起きる全ての物事には、為すべき瞬間というものがある。しかし、それは当事者の意思や都合と関係なしに、ふいに到来する。俺たちは目隠しをされたまま猛スピードで走る列車にしがみついている乗客のようなものだ。全神経を集中して乗り換える頃合いを見計らって飛び移らなければ、線路が切れて崖から落ちるしかない列車と運命を共にするか、線路に落ちて轢殺されるしかない。…」 

 なぜ人は信仰を捨てたのかという問いに自答するアブラム*3

「…そうではない。死が遠くなった社会では、過去も未来も消えて、あらゆる連続性は切断される。そこには歴史がない。だから人間は信仰を捨てる」 

 

*1:例えば60頁に「…すでに起訴準備は整っており、…」とあります。

*2:心神喪失者(善悪の判断能力かその判断に従って行動する能力を欠いた状態の者をいいます)と心神耗弱者(前記能力のいずれかが著しく低い状態の者をいいます)の刑の減免について定めた条文です。

*3:本書第1部の重要人物です。